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熱出てた

2010/05/16

風邪ひいてました。
今年のはノドからくるみたいなので皆さんも気をつけましょう。

[農業魔王 最終回]
「久しぶりだな、いつぞやの少年よ」
「でたな魔王!」
「貴様を殺しにきた」
「修行の成果、見せてやるだよ!うおおおおおお!!」
スバン!
「へへ…魔王ん農業はこんなモンだべか?」
「今のは農業ではない、ただの家庭菜園だ」
「なん…だと…?」
「どうした?まさか今のが人間の農業だったのか?これは失礼した。あまりにチープな農業に家庭菜園かと勘違いした」
「人間をナメんなよ魔王…今こそ修行の成果見せてやるだ!
うおおおおおおおお!!混合農業秘奥義・合鴨放鳥波!!」
「最先端農耕奥義 ・ 湛液型水耕(Deep Flow Technique)!」
ズガン!
「ほう。我がD.F.Tと互角か」
「おめぇにゃ農業だけじゃ勝てねぇ。だからオラは新しく畜産を取り入れて複合農業ん力を手に入れたんだべ」
「収穫量で上回る余に対抗するため畜産と合算したのか」
「家畜の糞が肥料になり、収穫物ん余剰が飼料になる全くムダんない究極ん農法だべ!まいったか魔王!」
「確かに合理的な農法である、褒めてつかわす。しかし貴様は重要なことを忘れておる」
「強がってもムダだべ魔王!まだオラは本気も見せてねぇ!」
「農業を極めた余が混合農業のことを知らぬとでも思ったか」
「なんやって?」
「混合農業は完成された農法であるがゆえに、農家に多大な労働を強いらせるリスクもあるのだ。その技の使用は自らの命を削る行為に等しい」
「気づいていただべか…」
「だから余はあえて混合農業は使わなかったのだ。体力の落ち切った今の貴様がその農法を多用すれば死ぬであろう」
「オラは死んでもええだ!おめぇを倒せればそれでええ!」
「命をかけて守るほど人間の社会に価値はあるのか?」
「オラはただ自分の畑を守りたいだけだべ!」
「貴様の覚悟しかと受け取った。余の究極ともいえる農業にて引導を渡してやろうぞ」
「究極の…農業?」
「完全人工光型植物工場、これこそが余の辿り着いた究極の農業である。安全性・安定性・高速生産・土地効率・労働生産性どれをとっても比類のない完璧なシステムだ。D.F.Tもこの植物工場のひとつに過ぎぬ」
「な、なんて妖気だっぺ…」
「もはや貴様が命を削った混合農業の生産量すらも軽く上回るであろう。さらばだ少年よ」
「オラの体もってくれ!」
「最先端農耕秘奥義 ・ 完全人工光型植物工場!!」
「混合農業究極奥義・改良三圃式輪栽農業!!」
ズガガガン!!

「はぁっ…はぁっ…」
「ほう、混合農業でここまでの力を引き出すことができるのか。
しかし肝心の貴様はもう虫の息、その農業ではダメなのだ。
いたずらに農家の負担を増大させる農法は次代に続かぬ」
「ダメだべ…こん魔王にゃどうやっても勝てんべ」
「人間にしておくには惜しい少年よ。これで終わりだ」
「チョビン!まだ諦めんにゃ早いっぺ!!」
●と、父ちゃん「父ちゃんの林業とおめぇの混合農業さ組み合わせるだ!
死ぬときは家族一緒だべ!」
「父ちゃん…」
「チョビン一家にだけいい格好はさせんべ。オイラの漁業も組み合わせるだ、チョビン!」
「近所のおっちゃん…」
「さあチョビン、皆の力を合わせて魔王を倒すだよ!!」
「分かっただ!ありがとうみんな!」
「農業と畜産と林業と漁業の四種混合農業だと…?そのような農法聞いたことがないぞ…もはや農業ではない、滅茶苦茶だ」
「これで最後だ魔王!くらえ!混合農業究極秘奥義・農林畜水産波〜!!」
「い、いかん!」
ちゅど〜〜ん!!

「ハァハァ…や、やっただか…?チョビン」
「…これでダメやったら終わりだべ。もうオラたちにゃ目ん中に浮かぶ透明のウネウネを追っかける力も残ってないだよ…」
「頼む、くたばっててくんろ、魔王」
ゴゴゴゴ…

「見事な農業であった。褒めてつかわす」
「ア、アレを食らって生きているだか」
「余の植物工場を焼却する真・焼畑農業の発動があと0.01秒遅かったら、この首は取れておっただろうな」
「終わりだべ…人間はもう終わりだべ」
「何ちゅう魔王だ」
「魔王、オラたちの負けだべ、さあトドメをさすっぺよ」
「悔いはないか、人間よ」
「ああ、悔いはなか。オラたちはやれることは全部やっただ。
いい畑さ作れるモンが繁栄すんのが世の摂理だべ。おめぇの好きにするだ」

「皆の者、帰るぞ」
「魔王様…?」
「人間との戦争はやめだ。魔界へ帰る仕度をせよ」
「いきなりどうなさいました?」
「何度も言わすな。引き上げだ」
「なぜ急に人間の味方をされるのですか。お父上さまのことをお忘になられたわけではございますまい」
「別に人間の味方になったわけではない」
「それではなぜ」
「くどい。農作業というのは一人ではできぬ。世界という畑を耕すのをしばしの間、人間に任せてみようと思ったのだ」
「人間どもに任せて大丈夫なのでございまするか?」
「こやつらの必死な農業に触れてみて、人間の農業の行く末を見てみたくなったのよ。不満のある者は名乗り出よ」
「不満のある者は誰もおりませぬ。我らは魔王様に一生ついていく所存でございます」
「うむ。人間が農業を軽んじた時、余は再びこやつらの前に現れるであろう。その時まで世界は貸しておいてやる」

こうして世界はチョビンの命をかけた農業により救われた。
しかし世の中が農業を軽視した時、再び農業魔王が我々の前に姿を現すかもしれない。

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