設定と展開の漫画
2021/02/10
前回はキャラ作りをネタにしました。
今回はその視点と全くの逆、設定と展開の漫画について考えたいと思います。
設定と展開の漫画というのは、ドラマの中心に人間がいない漫画のことです。
つまり人間を切り離して物語を考えた結果、生まれたものですね。
魔法暦1276年、魔法国家マジックジャン公国は7人の魔法卿を選出する魔法評議会を開くも、それを妨害するべく機械勢力マシンダーゾ帝国が議会を襲撃。そこにたまたま居合わせた前魔法卿の1人マジカヨ卿の息子で魔法と機械を両方扱える才能”ダブル”を持つ主人公は数奇な運命に巻き込まれていく的なアレ。
人間が1人もいねえ!全部設定じゃねーか!みたいな物語。
いわゆる設定資料集と呼ばれる作品ですね。
これははさすがに例として大げさなので、別の例を挙げてみます。
正義の味方、ヒーローマン!
今日も町の平和を守り悪を倒す!
でも今日のヒーローマンは少し変だ。
困っている人を助けない…
でもじつはその困ってる人は人間に化けていた怪人だった!
ヒーローマンは全てお見通しだ!いつものように怪人を成敗!
ありがとうヒーローマン!
これが設定と展開の漫画です。
困ってる人を助ける正義の心というデータを入力されたプログラムが走ってるだけの人形、中身に人間がいない物語です。
ただ助けるだけだと話に捻りが無くて退屈だから、困ってる人を助けないという「展開」を用意し、登場人物はその命令通りに動いています。毎回この「展開」だけを考えれば後は自動でキャラが動くという寸法です。
まぁ要するに。
ガッチガチにキャラ設定を固めてその設定どおり忠実に動くキャラを見せる物語って事ですね。常に決まった反応しか返さないものに人間味は感じません。
アメコミのヒーローものが「正義とは何か」「理想のヒーロー像とは」っていうテーマになりやすいのは、悪と戦う人々はロボットではなく人間だからかもしれませんね。機械と違って人間は悩み、考える生き物なんですよ。
これもかなり大げさな例なので、別の例を挙げてみます。
僕には他人の頭の上に数字が見える。
この数字は誰かにフラれた回数らしい。
あんまりモテそうにない子が0なのは何となく理由が分かるけど、モテそうな子が2ケタの数字だったりするから世の中分からないこともあるもんだ。
僕が気になってる子はずっと数字が0だったけど、この前1になっていた。
誰にフラれたんだろう。あんな可愛い子を振るなんて…
でもこれはチャンスかもしれない。今告白すればもしかして…
でも振られた直後に告白なんて調子の良い卑怯者だと思われるかもしれない。
いや、あの子には分からないはずだ。
僕は思い切って告白した。
その子は「少し考えさせて」と言った。
次の日、鏡を見たら僕の頭の数字は1になっていた。
これも設定と展開の漫画です。
「フラれた数字が見えて、それをネタに告白したらフラれる」という展開を見せたいってだけで、物語の中心にあるのは人間ではなく設定と展開です。
告白するかどうか悩んでるのは人間っぽいんじゃね?って思う人がいるかもしれませんけど、判別基準はそこじゃないんです。
「ドラマの中核にあるものが人間か設定・展開か」
これが設定と展開の漫画かどうかの境目になります。
上の話は主人公が告白するかどうか悩む物語とは言いにくいです。
「フラれた数字の見える主人公が告白したらフラれて自分の数字が増えた」という作者の見せたい設定と展開が中心にある物語です。
作者の用意した設定と展開に付き合わされた人間の物語、という言い方もできるでしょうね。見せたいのは人間ではなく、設定や展開なのです。
だから物語の整合性が取れない事故も多くなります。
上の物語でいえば「気になってるあの子っていう割にはその子が想いを寄せてる相手すら見当もつかないのか」って感じですね。設定と展開が先にあって人間を見てないからこそ起こりやすいミスです。
しかし。
話はそう単純ではありません。
この設定と展開の漫画。
上手く作れる人が作ったら面白いんです。
要するに、人間を見せなくても設定と展開だけで読者を惹きつけ、楽しませることができる作品はあるってことです。
なぜなのか。
見てて疲れないんですよ。
人間のいない物語というものは。
人間の心を理解しようとしなくて済むから疲れないんです。
設定資料集もそれはそれで凝った内容なら読むのは楽しいもんです。
むしろ頭からっぽにして見ていられる人間のいない物語の方が気楽で良い。
テンプレと言われようが分かりやすくていいじゃないか。
学校や仕事で疲れてるんだから、せめて娯楽くらい疲れたくないわ。
そういう人もいるはず。
そしてそれは間違いではないんです。
人の好みに正解も不正解も無いのだから。
需要があれば供給も生まれる。
極論をいえば、物語に人間が必要だとは限らないってことです。
バランスの問題かもしれません。
分かりやすく言うと、エンタメ寄りか文学寄りか。
国語で「この登場人物の気持ちを答えなさい」という問題が存在するのは、解けない人がいるからなんですよ。
人間の心というのは奥が深い。
だからそれを探っていく面白さがあるんですけど、逆をいえば分かりにくさもあるということです。
薄っぺらいキャラだと分かっていても、分かりやすさ優先でそういうテンプレキャラをお出しするケースもある。なぜならエンタメはお客さんを楽しませるのが何より優先されるから。
お客さんを楽しませるには分かりやすさが重要。
このエンタメと文学の配分、バランス感覚は難しい。
いきなり難解な内容で読者を選別するのではなく、最初は間口を広めにして少しずつ自分の作品に引き込んでいくやり方もあるでしょう。
最初は分かりやすいテンプレキャラを見せて、少しずつそのキャラの人間臭い所を掘り下げていくとか、物語最初で読者の引きを得る為に展開中心の流れにして、それから少しずつ物語の中心を展開から人間にシフトしていくとか、人によってやり方は千差万別でしょう。
「物語の中心に人間がいないとダメ」とか「テンプレキャラは薄っぺらいから避ける」という固定概念に囚われず、面白い要素は何でも取り入れてトータルバランスを計算するといった柔軟性が重要なのかもしれませんね。
2/9までの拍手お返事です。
■ラノベは表紙で売上が左右されるという話もありますし、視覚が読者に与える影響力というのも考えると小説も一筋縄ではいかない所ですね
■漫画の背景はアシスタント製かどうか判別が難しい所もあったのであえて作品名を挙げることはしませんでしたけど、個性的な背景は強く印象に残りますね
■星痕症候群!星痕症候群!
■百合漫画が元となる能力なのでTSや女装は当然ながら百合とは認められず存在が抹消されます。いちおうプロットは仲間の女子キャラを潜入させる形だったんですけど、この能力の真骨頂は関わった全ての女キャラにフラグを立てるというものなので味方の女キャラが次々と落とされてしまうという
■最初にキャラの性格とかを細かく設定してしまうと動かしにくく感じるので自分はいつも性格を最初に作り込まないようにしてました
■人間を見せる物語はけっこう地味めで最初の引きが弱いっていう弱点があるなぁって感じてるんで、どうやってバランス取ればいいのか毎回悩みます
■トーンを使わない理由は日記に書きましたが、射線を多用すると手の労力が半端なくて時間も吸われるので、射線に頼る描き方は避けるようにしています。20分という時間内にスカスカにならない背景を仕上げるのが何よりも最優先の練習なのです
■需要がある以上は供給も生まれるってことですね
そのバランスをどう取っていくかというのも作者の個性になるのかも
■特に漫画の場合はテキストじゃなくて絵で見せろって意見をよく聞きますね
■履歴書に性格を書く欄は無いので良い方法じゃないかなぁって感じます
個人的に人間っていうのは考えがぶれた方がリアリティがあると感じるんですけど、見せ方(枝の伸ばし方)を間違えると支離滅裂な行動になってしまうんでどこに芯を置くかっていうのは大事ですね
■4コマは4コマで要求されるものがあるので一筋縄ではいかないイメージ
■ネームの練習もしようかと思ってるんですけどこれが難しい
はたして自分の納得できる漫画が描ける日はくるのだろうか…
■キャラの紹介文は別の所でセンスが求められる気がする
けど市販作品の場合は大抵作者当人が書いてないケースが多いんじゃないかなぁってメタ視点で見てます
< タイムラプス
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キャラ作りの違和感 >
シナリオが良い結果としてキャラの魅力を評価される。逆に、見ていて脚本の都合上で言動しているように見えて冷めるキャラもいる。それもやはりシナリオが悪い。作画◎女◎渋いおっさん◎筋肉◎シナリオ×じゃ見に行かない。とはいえ作画×では目に留まらないけど